どのように研究をするかについて、ジュニアペーパーや卒業研究では基本的に文献を用いた調査を想定しています。学問領域によって文献を用いた研究手法は様々あります。
ここでは、レビュー論文を幾つか類型化したものを説明します。
レビュー論文の定義と目的
過去に行われた研究を検証し、そのデータや論拠を統合したもの。
レビュー論文の目的は、「選択したテーマに関する過去の研究を収集、統合し、最新の既存の知識体系に新たな知見を蓄積させ、統合を促進する」こと
⇨ 過去に行われた研究結果を集めて再検討・評価し当該分野の全体像を包括的に整理
なぜレビュー論文を書くのか?
自身の知識やスキルの向上: 最新の研究動向を把握し、批判的分析力や文章力を向上させる
研究分野への貢献: 既存研究のギャップやバイアスを明らかにし、将来の研究の方向性を示し、質の高い研究を促進する
研究論文とレビュー論文の違い
研究論文(原著論文)は、研究者が自ら実施した研究に基づき、新たな発見や結論を論じるもの。一方、レビュー論文は特定のテーマに関する既存の研究を評価・批判し、包括的にまとめたもの。レビュー論文は、研究論文を分析し、その結果や意義を整理する役割を果たします。
研究分野全体の動向を把握するための重要なツールであり、特に研究の初期段階において有用。その分野の基礎知識を習得し、研究テーマの設定や重複を避けるための指針を得られる。複数の研究論文を比較検討し、その結果の妥当性や限界を明らかにし、その分野の研究を深化させる役割を担う。
レビュー論文の種類
本セクションでは、以下の4つの主要なレビュー論文の種類について詳しく説明します。
ナラティブレビュー
スコーピングレビュー
システマティックレビュー
メタ分析
種類 | 説明 |
ナラティブレビュー(NR) | 従来型の文献レビューの形式。特定の研究分野について物語を語るように記述。主な目的は、信頼性が高く、説得力のある議論を展開すること。幅広いトピックを扱えるので、新しいテーマや未開拓の領域において有用。既存の知識を体系的に整理し、研究の現状を理解するための重要な手段となる。 |
スコーピングレビュー/マッピングレビュー:Mapping review (MR) | l 特定のトピックを包括的に理解し、疑問に答えるためのレビュー。量的研究、質的研究、混合研究など、あらゆるタイプの研究を網羅し、広範な検索を行う。MRは、全体像を把握し、学術的な研究から導かれる様々な視点を提供する(例、「ブロックチェーンの医療におけるメリットとリスク」、既に一定の研究が進んでいる分野の理解を深めるのに有効)。 l NRとSRの中間に位置し、幅広い知見を網羅的にマッピング(概観)することを目指す。研究テーマに関する文献の数や範囲を体系的に調査し、利用可能な文献やエビデンスをマッピングして要約。まだ研究されていない範囲(ギャップ)を特定し、将来の研究の方向性を示します。 |
システマティックレビュー(SR) | 特定の研究課題について関連するすべてのデータを照合・統合するための最も包括的なアプローチ。あらかじめ定義された適格基準を用いて文献を厳密に評価し、質の高いエビデンスを提供する。 l 通常、狭い範囲に焦点を絞った議題を扱い、特に医療分野で広く利用される。(例えば、「COVID-19に関連する小児の心血管リスクを理解する」といったテーマで、治療プロトコルを策定する前に学術的なエビデンスを収集)。 l より詳細かつ包括的な文献検索と評価を行う。研究のスタンダード。例えば、コクラン・レビュー(Cochrane Reviews)は、医学分野で国際的に高く評価されているSRの一例。 |
メタ分析 (システマティックレビューの一部) | l 複数の独立した研究結果を統計的に統合し、一貫した結論を導くための手法。特に量的データを扱う際に有用。メタ分析は、個々の研究では得られない強力なエビデンスを提供。 l メタ分析のプロセスには、適格基準の設定、関連研究の選定、データの抽出と統合が含まれる。この手法は結果のばらつきを減らし、信頼性の高い結論を導くために重要。また、研究間の一貫性や異質性を評価することで、結果の解釈を補強する。メタ分析は医療分野で特に有用。薬物治療の効果や副作用の比較などに利用。メタ分析は、エビデンスに基づく実践を支援し、政策決定や臨床ガイドラインの作成にも寄与。 |
出典:Readable, 2024 レビュー論文とは?書き方や必要な要素、ポイントを徹底解説
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